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身体の使い方

自分には何の技術もなく、へたくそだな、何かしないとなと思っていたころ、

格闘技系の雑誌を読んでいたら、その中に驚くような記事が出ていた。(治療とは関係ありません)

宮本武蔵の動きを体現するとかで、大小2本の木刀を持ち、両手を垂らしてただだらんと突っ立っている。

そこに、相手に自由に打ち掛からせるのだが、すべて跳ね返すと同時に打ち込んでいる。

あげく最後は、自分の頭の上、3cmぐらいの位置に木刀を構えさせ、そこからどうぞ好きなように打ち込んでもらう。

この時、相手が打ち込んでといい終わる前に、不意打ちのように打ち込んできた。

それでも、両木刀をだらんと下げた状態から、跳ね返すという離れ業をやったという記事でした。

高岡英夫という初めて聞く名前でした。

そんなこと、実際にできるのか。嘘くさいな。と思うのですが、何か気にかかる。

すると、その雑誌の裏表紙の内側に、先ほどの記事の高岡英夫という方の会社(運動科学研究所)の商品が出ていた。

そこに「ゆる」という体操のビデオがあった。

値段は2000円とお手頃です。

何か気にかかるし、2000円ぐらいなら、一度見てみようと注文した。

届いて、さっそく見ながらやってみる。

内容は、立った状態で、まず頭の骨、つぎに首の骨と、自分で微妙にゆすりながら緩めていく。

背骨、肋骨と1個1個バラバラにゆすり緩めていく。

足先まで行くと、次は内臓。脳、心臓、肺、胃、肝臓、、、、と。

最後は筋肉を上から下まで順にゆすり緩めていくという内容でした。

やってみると、これは身体にいいなと直観。

その後に続く「動きの極意を教える」講座などにのめり込んでいくことになります。

ちなみに、このビデオを見ながら、ゆらゆらしてる僕を見て、弟はなんか変なことを始めたと思っていたそうです。(後に僕以上にのめり込み、とうとうゆる体操指導者にまでなってしまうのですが)

そこで勉強していくのは身体意識のトレーニングになるのですが、

身体意識というのは体性感覚的意識の略語で、

たとえば、手と足をくらべると手の方が感覚が濃い。

同じく手の中では、手の甲と手のひらでは、手のひらの方が濃い、

また同じ胸でも、女性と男性では、女性の方が濃いなど、

身体の中で、意識の濃淡がある。

これが名人、達人といわれるような人ほど、昔から言われる正中線、センター、体軸、丹田などという位置に、意識が濃くはっきり形成されていて、凡人ほど、この意識が雑多な状態になっているという。

この身体意識がきれいに整然と強くはっきりと形成されているということが、スポーツ、芸術、学問などの分野を問わず、すぐれた能力を発揮するための、本質的能力ということです。

この身体意識を形成していくトレーニング法を講座で教えていた。

ここで教えて頂いた意識・身体に関する知識は、今非常に役立っているのだが、当時はまだ全然治療に応用できるとこまで行けなかった。

ある講座の中で、先生が「たとえば指圧でも、脇や肘をプラプラに緩めて、そのゆるめた状態のまま指圧すると、相手が本当に押してほしい一点に届く指圧が出来る」といわれた。

しかし、当時(20年ほど前)の僕の頭では、上手く理解できず、脇も肘もプラプラだとふにゃっとして押せないよなと、別の機会に先生に直接質問してみた。

すると、先生が「ベスト(上肢を高度に使うための身体意識)の講座の時に言ったから、かえってわかりにくかったと思うけど、センターのトレーニングで、身体を緩ませて、余分な力みを抜いて立つのと同じように、親指でなら親指で相手の体に必要最小限の力で立つようにして。まずはそこからだね。」と教えて頂いた。

当時、頭ではなんとなくわかったつもりになった。しかしそれがなかなかうまくできない。うまくできないというか、まだまだ心の中では、刺激が強いほうが良いんじゃないかという呪縛から、抜けれないでいた。

だから相変わらず、全体としては多少、力みが減ってはいたが、いざ押圧するときは、まだまだ力んでいた。だから依然、思うような治療効果はありません。

しかし、そんな頃でした。あの高校時代に見よう見まねの手技を喜んでくれていた友人が癌になる。十二指腸。骨転移してステージ4。余命2か月。

それから友人の希望もあり、毎日朝と晩に病室に通い施術する。

施術といっても、当然効果的な何かができるわけではない。

施術することで少しでも不安の軽減、そして話し相手、せいぜい少し痛みを和らげる、ひどいときはそれすらできず痛みに気を失っているのを、ただそばにいるだけの時もあった。

そうなって気づかされた。そう身体意識などの本質的能力の訓練はしていたが(それすら満足には出来ていないが)、具体的な治療テクニックがなにもない。

ただ、きまったポイントを押していくだけ。しかも押すといっても、当時は何を狙っているのか、今押している組織は筋膜なのか、靱帯なのか、骨なのか、内臓なのか、それをどうしようとしているのかなど、なにもわからず、ただ押していた。そりゃ変わらないよな。

しかし当時は、そんなこと考えもしなかった。解剖の知識なんてほとんどない。もちろん解剖や生理が必要ですよといって、分厚い生理学書を勧めてくれた先生もいた。買っていたが、全くちんぷんかんぷん。結局読まずにほったらかし。

よくそんな奴が卒業できたよなと、一般の方は思うと思いますが、全療協の卒業テストなんて、素人に毛が生えたぐらいの知識量です。

ちなみに僕は満点で合格です。簡単です。試験の1か月前ぐらいに、この中から出題されますといって、うすい問題集をもらった。はっきり覚えていないが100ページもなかったんじゃないかな。しかもほとんどは次の中から答えを選べ式だ。

すべてのページを10枚ずつコピーした。それをテストまでに繰り返す。都合10回同じ問題を解くわけだから、もう問題見てすぐ答えは記号で覚えてるぐらい。

その程度なんです。テストに受かるためだけの勉強。しかも量もちょっと。とても身体を治療するための知識なんてありゃしない。

でも何か少しでも、もう少しでも痛みをやわらげることは出来ないか。

そんな時だった。香川で同じく空手をやっていた小笠原さん(彼も整体師になっていた。彼は直接師匠に内弟子として習い、もう後輩に指導する立場ぐらいになっていたと思います。空手のセンスも良かったし、空手も師範代になっている)から面白い整体があると教えてもらう。

しかもその講習会が香川であるという。紹介してもらい治療を受けてみた。超音波治療器を使うのだが、めちゃめちゃ痛い。痛いが体はずいぶん楽になった気がする。

とにかく、少しでも何かないかと思っていた時だから、すぐ飛びついた。2週間に1回、香川へ通い始める。1年間の講習予定だった。

講習を受けに行った日も、病室には来てほしいとのことで、車を飛ばして夜10時ごろにつき、簡単な施術と会話、たまに大きい声でしゃべりすぎて看護師さんに怒られる。

しかし、入院2か月半を過ぎたころから急激に弱り始めた。入院3か月、朝病室につくと、かなり弱っていた。

その日、2000年12月24日、クリスマスの朝、友人は僕の目の前で息を引き取った。

 

 

 

 

 

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