高松トレーニングクラブの中尾達文先生のブログで「孤独のすすめ」五木寛之著の紹介があり、みなさんも「老い」「衰え」についてどのように考えますか?とあったので、私自身の考えを書いてみたいと思います。
まず「孤独のすすめ」から引用されていた一節
「衰えを認め、受け入れる」人間はある一定の年齢を超えると、生理的にも肉体的にも、当然、衰えていきます。例えば下肢の力が弱り、転びやすくなる。嚥下も苦手になり、薬を飲んでも水を飲んでも喉に詰まったり気管に入ったりする。聴力、視力、持続力、記憶力、集中力なども半減してしまいます。それを認めず、「気持ちの持ち方次第で青春は続く」とか「前向きに頑張ろう」などとスローガンを掲げるのは、戦時中に竹槍でアメリカ軍と戦えと訓練をさせられたのと変わりありません。
この本を読んでいないので、全体としてはわかりませんが、この一節については賛成3割、反対7割といったところでしょうか。まず、
「気持ちの持ち方次第で~竹槍でアメリカ軍と、、、」ここには反対です。確かに「気持ちの持ち方次第で青春は続く」とかは一見ポジティブバカのようで浅はかな感じも受けますが、一面真実でもあります。
普段、患者さんの施術、治療をしていると、症状の大小にかかわらず、すぐに治る方、なかなか治りづらい方がいます。この差に大きく関係しているが、まさに「気持ちの持ち方」です。
治る、あるいは治療を受ければ治るだろう、と思っている方は確かに治りが速く、もう治らないと思っている方は、なかなか治りません。
これは病院でよく、骨が変形しているので、もう治らないといわれた。などということから治らないと思い込んでいる場合も多いです。でも骨の変形は治らなくても、痛みが改善、軽減などは充分あるし、実際生きていく上では痛みが改善できれば、骨の変形があっても問題ないですよね。
たしかオーストラリアの臨床試験で、6000人規模で行われた試験で、腰痛などの痛みのある人と、痛みのない人をレントゲン撮影したところ、痛みのある人にも、ない人にも同じ割合だけ骨の変形が認められた。この結果から、痛みと、骨の変形とは直接の因果関係はないということがわかっている。
日本でも腰痛で医療機関を受診した中で、実際に骨の変形などが認められるのは15%ほどで、あとは原因がわからないという。ことから腰痛治療で有名な福島医大の整形外科は精神科と組んで治療にあたっていると以前テレビで放送されていた。
そう、まさに心の問題が体に影響しているということです。
ちょっと話がずれてきているようですが、「老い」「衰え」も同じで、本当に衰えてしまったのではなく、実際はまだ充分機能するはずなのに、本人がもう歳だからと思ってしまうと、本当に衰えてしまいます。
ただ、人間必然性がないと、なかなかそう出来ない。だからただ「気持ちの持ち方次第で青春は続く」なんて簡単にはいかない、というかそう思えないということが多い。
おそらく、だからだと思うのですが、年を取り体の衰えに嘆くよりは、「衰えを認め、受け入れて」その中でしっかり生きようということだと思うのですが、そこが賛成3割というところです。
気持ちの持ち方、イメージの持ち方で体が変わるのは事実です。実際にイメージしてみてください。自分の体の隅々まで赤いきれいで暖かな血液が流れていく、そして各細胞が活発に働いている。これだけで少し血流が良くなり、暖かくなった感じがしませんか?呼吸も少しゆったり大きくなって来ませんか?
これだけで痛みが消えるわけでもなければ、関節が大きく動くようになるわけでもありませんが、この少し良い状態ベースで数日、数週間、数年たつと肉体的、精神的に大きく変わってきます。
ただ、そうは言っても、実際にいつまでも変わらないなんてことはなく、生物学的に年は取り、衰えはします。気持ちだけで20代の肉体なんて無理な話です。そこは受け入れましょう。
簡単に年だとあきらめず、希望を失わず、まだまだ元気で活発な体、細胞をイメージして、やりたいことをやろうとして生きる。そのうえで、衰え、老いる部分は嘆くことなく受け入れて、ゆったりと泰然としている。(理想ですが)
最高の理想をもちつつ、そのうえで受け入れるべき衰えは受け入れる。どちらかに偏らず、が中庸ということではないでしょうか。
老いについて、まだ48歳の私が思う理想です。